自由が丘MCクリニック 医師:大谷伸久

豊胸バッグと悪性リンパ腫(未分化大細胞型)との関係が示唆された!

豊胸バッグを入れているひとへの注意を喚起です!(FDA発表)
※FDA:米国食品管理局:日本の厚労省にあたる機関
※悪性リンパ腫とは、血液のがんのことです。

豊胸バッグ(正確には、中身がシリコンジェルを使ったバッグ)は、がん、特に乳がんを引き起こすと可能性があると一時問題になったことがありました。

その後の経過調査により、乳がんになることはないと発表されましたが、いまだに自己免疫疾患に関してはいまだ不透明なことは依然として残ります。

乳がんの原因にはならないとはいうものの、ここ数年前より、豊胸バッグと悪性リンパ腫との関連性が指摘され始めました。

FDAは、豊胸バッグに使われる生理食塩水バッグまたはシリコンバッグを用いた豊胸術、乳房再建手術を受けた患者に、非常にまれですが悪性リンパ腫(未分化大細胞型リンパ腫:ALCL;anaplastic large cell lymphoma)が発生する可能性があると発表しました。

1997年1月から2010年5月までに発表された医学論文のレビューを調べ、各国の研究者、豊胸バッグ製造会社、国際的な医薬品・医療機器監督機関などから提供された情報を分析して、ALCLリスク上昇の可能性を見いだしました。

未分化大細胞型リンパ腫(ALCL;anaplastic large cell lymphoma)とは?

悪性リンパ腫とは、血液のがんです。

リンパ腫にも2種類あって、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫があります。

ALCLとは、増殖性の速い非ホジキンリンパ腫の一種です。

まれに血液以外のリンパ節、皮膚、骨、軟部組織、肺、肝臓にできると言われています。

豊胸手術をしていない女性で、このタイプの悪性リンパ腫の発生頻度は、50万人に1人だそうです。診断はなかなか難しく、かなりまれな病気とされています。

では、そのがん細胞が豊胸バッグを入れているひとのどこに存在するのか?を説明しましょう。

豊胸バッグのどこに悪性リンパ腫(未分化大細胞型)があるの?


豊胸バッグが入っているひとのイラストをみて見ましょう。
豊胸バッグを入れているとがんになる可能性?

この悪性リンパ腫は、被膜と豊胸バッグの間に溜まった「リンパ細胞を伴った水;漿液」の中に存在しています。

必ずしも水が溜まっているからといって、イコール=悪性リンパ腫というわけではありません。そして、この悪性リンパ腫は乳房に存在しますが、乳がんではありません。

症状は?診断は?

インプラント関連の痛みやしこり、腫れなどの症状を訴えていたようです。

診断のきっかけとして最も多かったのは、漿液(いわゆる水のこと)の溜まりが持続したために行われた豊胸バッグ入れ替え手術でわかりました。

漿液や瘢痕組織を採取して検査した結果、悪性リンパ腫とわかったのです。(上記の症状を訴えるひとは多く、典型的症状もないようなので疑ってかからないと診断は難しいですね・・・)

現時点では、インプラントの種類や植え込みの目的がこの悪性リンパ腫(ALCL)のリスクの高低に影響するかどうかは明らかではない。

一般人のALCLの頻度および乳房にできる場合の頻度

米国で豊胸バッグをいれていないふつうの悪性リンパ腫(ALCL)と診断されるのは、1年間に約50万人に1人の頻度です。

ALCLは非ホジキンリンパ腫の1種で、リンパ節や皮膚などを含む様々な場所に発生しますが、乳房に局在するケースは非常にまれです。

豊胸バッグを入れている場合のALCL頻度

FDAが現在把握している、豊胸手術後にALCLと診断された症例は全世界に約60例だが、正確には確認はできていない模様です。

豊胸手術を受けた女性は、全世界に500万人から1000万人いると推定されています。(全例に検査をしているわけでもないのであまりデータはあてにならないと思うが・・・もっと多いかも?)

1000万人に60例(50万人に3人)だとしても、通常のALCLの発生率に比べかなりの高い頻度(3倍)でALCLになることになります。

FDAは医療機関に要請し、豊胸バッグとの因果関係を調査をしています。

*アメリカ形成外科学会やその他の学会に所属する専門医とともに、乳房インプラントの手術を受け、ALCLと診断された患者のデータベースを作成。
豊胸バックにおける悪性リンパ腫の発症頻度

医学論文のレビュー

1997年1月から2010年5月までに発表された医学論文のレビューを調べ、各国の研究者、豊胸バッグ製造会社、国際的な医薬品・医療機器監督機関などから提供された情報を分析して、ALCLリスク上昇の可能性を見いだしました。
*インプラント埋め込み後に乳房にALCLが見付かった女性が34例(母体数は不明)。

*平均年齢は51歳で、豊胸手術から診断までに平均8年(診断までに1~23年)。

*手術目的は、11例が乳房再建、19例が豊胸で、4例については報告なし。

*豊胸バッグの種類は、24例がシリコンバッグ、7例が生理食塩水バッグ、4例については報告なし。

*治療について報告していたのは20例で、予後は全身性のALCLより良好と考えられた。

 

*インプラント製造会社に協力を依頼し、手術を受ける女性にALCLリスクについての説明が確実に行われるよう、患者と医療従事者向けの表示を改訂。(日本ではおこなわれていない)

*医療従事者に、乳房インプラントの手術を受けた後にALCLと診断されたあらゆる症例の報告を要請。また、術後時間を経てからインプラント周囲に漿液腫が認められた場合には、漿液を採取して専門的な検査機関に送付し、ALCLでないかどうか確認するよう要求。

*豊胸バッグを入れた患者は、異常がない限り特別な検査を受ける必要はなく、予防的なインプラント抜去は不要で、これまで通りフォローアップしてもらえばよい。ただし、インプラント周囲に変化が認められた場合にはすみやかに受診する。

*これから豊胸手術を受けようと考えている女性には、リスクと利益について専門医と十分に話し合う機会を与える。

何回もしつこいようですが・・・
豊胸後の悪性リンパ腫(ALCL)の兆候としては、
・腫れ
・インプラント周囲の痛み
・インプラント付近のかたまりらしきもの
・乳房の左右の違い

以上の症状があったら受診してフォローしてもらうということなんだけど、数年経ったひとはほとんどがなにかしらこのような症状を訴える感じがするのだが・・・

FDAによれば、このような人たちも一応検査を依頼した方がいいということか?・・・

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過去のコメント
>「1000万人に60例」が「『かなりの』高い」頻度!?医学を学ぶ方々にはそう感じられるのでしょうか?いやぁ、算数や数学が苦手だった私には、その割合が「高い」とは思えませんけどねぇ…。でも、DRも書いているように、兆候はわりと普通にありそうな内容ばかり。今回のは難しくてわかりづらかったです。

裏窓ドクター
1000万人に60人であれば、かなり「低い」頻度でしょう。

豊胸バッグとは無関係のふつうのALCLの発生率は、人口50万に1人。(アメリカ統計;日本はわかりません。もしかして人種差もある病気かもしれないし・・・)

豊胸バッグを入れている人だと、50万に3人でふつうに比べると3倍も「高い」発生率の差があるという意味です。

こう考えると「かなり高い頻度」だと思いませんか?

と言っても、50万人に3人という数からして医者が生涯出くわす機会はほとんどない頻度ですよね・・・また、その医学論文を書いている人によっては、1人の症例報告でなく、その1つの施設で豊胸バッグを入れているALCLを数人経験しています。

あまりにも偶然すぎ?

やはりそれぞれが調べればもっといるということなのか?どうも文章をわかりやすく、うまく書くのが苦手でして・・・

本文も少しわかりやすく(なった?)手直ししておきました。
ご指摘ありがとうございます。
いつもありがとうございます!