豊胸における人工インプラントを用いた手術または再建術はごくごく一般的な外科的手技であり、年間100万件を超える手技が世界的に実施されています。

乳房インプラントはシリコンゲル充填型と生理食塩水充填型に分類され、さらに表面は滑らかまたはザラザラなタイプに分けられます。

乳房インプラントで最も頻度の高い合併症には、被膜拘縮およびインプラント破損または周囲への漏出があります。

乳房インプラントは一般的な従来型の乳がんの発生リスクを増大しないと多くの研究で示されています。しかし、非常にまれですが、インプラントに関連する間葉腫瘍、主にデスモイド型線維腫症、および血管肉腫などは、例外的にまれに発症する程度とされています。

その他、インプラント留置による合併症は、数年前より話題になっている悪性腫瘍性大細胞リンパ腫(ALCL)の発症です。インプラントに関連するALCLは、表面がザラザラタイプの乳房インプラントにおいてより頻繁にみられます。

その原因として考えられているものには、人工物を入れている際の「漿液腫(浸出液みたいなもの」によって発症すると言われています。この項は、以前にもブログで記載されていますので、興味があれば参考にしてください。
☞悪性腫瘍性大細胞リンパ腫(ALCL)とは?悪性腫瘍性大細胞リンパ腫(ALCL)とは?悪性腫瘍性大細胞リンパ腫(ALCL)とは?

今回のケースは、豊胸バッグの周りにできた被膜が原因で、扁平上皮がん(SCC)の発症を来した症例を紹介します。

現在までに、乳房インプラントの被膜に関連する扁平上皮がん(SCC)の2症例報告が形成外科の医学論文で発表されています。今回の症例を含め4症例です。

この4症例は、すべてが注目すべき共通点を有していることがポイントです。4例とも腫瘍は豊胸バッグの周りにできた被膜の後面に発生していました。

各症例とも症状は、片方の乳房が急に大きくなり、痛みを伴う症状を来しています。各症例とも扁平上皮がんは扁平上皮で覆われた豊胸インプラントの被膜から発生し、周囲の乳腺組織と周囲の胸壁に広く広がっていました。

いずれの患者も解剖学的部位に他の原発性乳がんまたは扁平上皮がんは、存在しませんでした。進行した局所的な病変を示し、1年以内に転移を発症しています。

患者は長期の乳房インプラントを留置し、扁平上皮化したインプラントカプセル被膜の後面に生じたがんに引き続き起ったものと解釈されます。

ケース1 豊胸バッグ18年歴
56歳の女性が2012年に、赤紫色の皮膚変色を伴う左乳房に痛みと急に大きくなる症状が4週間続いていた。患者は1984年に豊胸のため両側シリコン乳房インプラントを受け、インプラント挿入の数週間以内に被膜収縮の症状を生じた。両インプラントは1994年に最終的に300mLの生理食塩水の豊胸バッグで再手術された。2012年の臨床所見では、左乳房の急に変化を来したため、インプラントの外科的除去が推奨された。
手術時、両インプラントは無傷であった。しかし、生検では左乳房インプラント被膜を裏打ちするように扁平上皮に関連する浸潤性の扁平上皮がんが明らかになった。原発性皮膚がんでもなく、この時点では転移もしていなかった。

その後、患者は放射線療法とともに化学療法を受けた。8か月以内に,患者は左脇の皮下に生検で扁平上皮がんを発症し、乳房にできた病変と同じであった。腋への転移部位の外科的切除とその後の放射線および化学療法を行った、その後1年以内に、皮下に触れるほどの複数のしこりが見られた。

ケース2 豊胸バッグ歴 約40年
81歳の女性。左乳房に触れるほどのしこりを発見。過去の手術歴には、良性の乳房しこりの広範囲に切除とその後の1970年代に豊胸バッグによる再建(インプラントの詳細は不明である)であった。

2012年に、患者は左乳房の急激な痛みと大きく腫れた。最初の短期間は保存的治療後、その後しこりが次第に大きくなり、5cm大までにしこりが成長した。そのため、豊胸バッグ除去が推奨された。

インプラントを除去し、インプラント被膜上の塊を生検したところ、インプラント被膜を裏打ちする扁平上皮とその関連する扁平上皮がんであった。

患者は左乳房切除術とリンパ節生検を受けた。病理組織検査では、インプラント被膜の後面を中心に扁平上皮がんで、乳腺にも浸潤していた。

5ヵ月の追跡時に、MRI、CTでは、肺および肝臓、縦隔および肺門のリンパ節腫脹、ならびに足の軟部組織に腫瘤が認められた。肝腫瘤の生検により、転移性扁平上皮がんが確認され、全身状態不良のため、患者は追加の化学療法を受けず、この扁平上皮がんにより死亡した。

いづれも乳腺またはリンパ節、腫瘍細胞はエストロゲンまたはプロゲステロン受容体はなく、遺伝性の乳がんではなかった。

ディスカッション
この報告以前に豊胸バッグに関連する扁平上皮がんの2症例が形成外科の医学論文で発表されています。これらの著者らは、いずれも豊胸バッグの被膜の後面から発生した扁平上皮がんついて記述しています。

今回の症例は、豊胸バッグの周りにできる被膜が原因であると推定される扁平上皮がんの最初の症例を報告しています。
豊胸バッグに関連しない原発性の「乳房の扁平上皮がん」は非常にまれであり、全乳がんの推定頻度は0.1%です。進行性で予後が悪いとされています。この診断には、皮膚がん、皮膚付属器がん、または乳頭がんと転移の除外が必要とされています。

いずれの患者さんも通常の原発性乳がんの組織学的証拠は認められていません。両症例において、がんはインプラント被膜の後面に発生し、被膜を介して下層の乳腺または胸壁に浸潤していました。両患者の豊胸カプセルは広範な扁平上皮化を示しています。

これらの豊胸バッグに由来する扁平上皮がんの病因は不明です。乳房の扁平上皮がん自体がまれであり、臨床像もまれであるため、豊胸インプラントの被膜関連の扁平上皮がんは、今までにも十分に認識されていない可能性があります。

急な片側乳房痛と急に乳房が大きくなる症状が生じた場合、とくに長期間挿入された乳房インプラント患者においては、悪性腫瘍を除外することが重要だと報告されています。

豊胸バッグトラブルと合併症、シリコンバッグ除去を考えているひとへ
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